小樽市議会 平成25年第3回定例会 2013年9月11日
認知症に優しいまちづくりについて
2013年9月11日、小樽市議会の一般質問で、中村岩雄議員が「認知症に優しいまちづくりについて」質問し、市長 中松義治が答弁しました。
- 質問者
- 中村岩雄 議員
- 答弁者
- 市長 中松義治
議事録から機械で取り出したものです。正しくは会議録でお確かめください。
質問 3番 中村岩雄
一般質問をいたします。認知症とは、脳の器質的障害により知能が低下した状態です。記憶や見当識の障害を含む人格変化などを伴い、生活に支障が出ている状態を指します。認知症の症状には、中核症状と行動・心理症状と呼ばれるものがあります。中核症状とは、脳細胞が壊れることにより直接起こる症状で、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などです。行動・心理症状とは、本人の性格、環境、人間関係など、さまざまな要因により、鬱状態や妄想のような精神症状や日常生活への適応を困難にする行動です。日本では血管性認知症が多いと言われていましたが、最近はアルツハイマー型認知症が増加しています。世界保健機構(WHO)の推計では、世界の認知症患者の数は 2050 年までに現在の約3倍の約1億1,500 万人に達するとされ、今後の急増への対策を進めるように各国へ要請しています。8月 26 日付けの読売新聞朝刊第1面に、次のような記事が掲載されていました。見出しは「自宅で老後 街挙げ応援」「先進ベルギー 買い物見守り・徘徊対応」「認知症 社会と歩む」、「ゆったりと流れる運河に囲まれ、中世の面影を色濃く残すベルギーの古都・ブルージュ。人口約 12 万人の世界遺産の街は、もう一つの顔を持っている。認知症に優しい街、だ」という書き出しで、このまちに住む認知症の 78 歳の男性が、なじみの書店で女性店長と言葉を交わしながら新聞を買う場面の写真が載っています。握り締めた代金ちょうどの小銭を払うのを妻が見ている。認知症になると支払を忘れるなど買物が難しくなるが、この男性も認知症が進行し一人で出歩くことはできないが、店側に理解があれば、こうして自分で買物ができるという事例の紹介です。また、このまちのNPOが運営する認知症ハウスには、認知症の人や家族の人が自由に出入りしており、互いの状況を話して支え合う場所になっていて、認知症に優しいまち、ブルージュの推進役も果たしているといいます。この地で約 15 年にわたり認知症の人を支援し、病院や行政などの地域との協力関係を地道に築いてきたという、このNPOの理事のコメントを紹介します。「認知症は何も分からなくなるわけではなく、できることもあるのに、長い間偏見にさらされてきた。それを改め、できるだけ自宅で質の高い生活を送るためには周囲の意識を変えるのが最も大切だと考えた」といいます。9月からは、地元住民がよく買物をする商店街で、認知症の客を歓迎する店の入り口にハンカチを模した運動のマークを掲げる予定といい、商店街を舞台に認知症の客とのやりとりを描いた短編映画も制作中とのこと。子供扱いしない、同じものを2度買うなどの特徴的な症状を理解するといった勉強会などを準備中といいます。市警察では、徘回で行方不明になった人を早く捜すため、通報と同時に、立ち寄る可能性のある昔の住まいや職場などのリストを関係者から入手するようにしたといいます。これら一連のブルージュの試みについて、ロンドンに事務所のある国際アルツハイマー協会は、「地域の人、行政、NPOがつながって包括的な地域作りをする先進例」として評価しています。なれた場所で心地よく暮らせば、症状の悪化を抑えることも期待できるというわけです。加齢に伴う認知症への社会の対応は、高齢化が進む日本や欧米では喫緊の課題であります。EUでは、2010 年に認知症協力会議を発足し、医療・介護の研究だけでなく、認知症の人が地域の一員として生きがいを感じて暮らせる社会づくりを推奨し、イギリスでは、2009 年、国家認知症戦略を策定、キャメロン首相の下、プロジェクトチームを設置し、認知症に優しい地域づくりを進めています。また、アメリカでは、2011 年、国家アルツハイマープロジェクト法を制定、フランス、オランダ、オーストラリアなどでも、既に国を挙げて総合的な国家戦略を策定し、施策を推進しています。その基本理念は、認知症の人の思いを尊重し、住みなれた地域での生活の継続を目指すというものです。日本では 2012 年6月、厚生労働省がこれまでの認知症対策を 180 度転換する、今後の認知症施策の方向性についてという方針を発表しました。これは、これまでの認知症高齢者を病院や施設で見るという流れを不適切と反省し、認知症になってもその人らしく地域で暮らしていける環境づくりを目指したものです。しかし、この認知症の方を地域で見るという方針は、国際的に見ると至極当然のもので、日本の方針がようやく国際的にも遜色ないものになったにすぎません。世界的に見ても類を見ないスピードで高齢化が進む日本で、認知症対策がいかに遅れているか、そして日本がどのような課題を抱えているかについて、幾つか触れておきたいと思います。各国の高齢化率、高齢者に占める認知症高齢者の割合、認知症高齢者数で比較してみます。これは日本の高齢化率が 23 パーセント時点での比較です。日本の高齢化率 23 パーセント、イギリス 17 パーセント、フランス 17 パーセント、オーストラリア 13 パーセント、デンマーク 17 パーセント、オランダ 15パーセントです。高齢者に占める認知症高齢者の割合、パーセンテージでは、日本 10 パーセント、イギリス7パーセント、フランス6パーセント、オーストラリア 10 パーセント、デンマーク 10 パーセント、オランダ5パーセントとなっており、認知症高齢者数は、日本 305 万人、イギリス 70 万人、フランス55 万人、オーストラリア 27 万人、デンマーク 8.5 万人、オランダ 15 万人となっています。この時点の推測で、2025 年の日本の認知症高齢者数は 470 万人に達すると言われていました。しかし、2012 年度時点で既に日本の高齢化率は 24 パーセントと世界一、65 歳以上の高齢者に占める認知症高齢者の割合は15 パーセントに、認知症高齢者数は 462 万人になっていますし、将来発症する可能性のある予備軍がさらに 400 万人と推計され、団塊の世代の高齢化で急増するのは確実です。次に、各国の認知症国家戦略の予算規模を比較してみます。認知症高齢者1人当たりで換算すると、年間でフランス4万 4,651 円、イギリス 7,500 円、デンマーク 3,176 円、日本 1,213 円となります。認知症高齢者が突出して多い日本が、この問題にかける予算がいかに小さいかがわかります。次に、認知症高齢者の暮らす場所について、先進国と日本を比較してみます。自宅で暮らしている人は、イギリス 64 パーセント、フランス 60 パーセント、オーストラリア 66 パーセント、デンマーク 60から 65 パーセント、オランダ 95 パーセント、日本 50 パーセント。ナーシングホームは、イギリス 36パーセント、フランス 40 パーセント、オーストラリア 33 パーセント、デンマーク 35 から 40 パーセント、オランダ5パーセント、日本 35 パーセント。病院は、イギリス1パーセント以下、フランスほとんどなし、オーストラリア1パーセント程度、デンマークほとんどなし、オランダほとんどなし、日本は何と 15 パーセント。入院期間については、日本が6か月以上と突出し、精神科への入院に限っては平均2.5 年と長期化しています。日本を他国と同様の水準にするためには、現在、認知症で病院に入院している 70 万人を地域で見ていくことになります。日本の問題を解決するためには、入院をさせない、退院を促進させる、地域で認知症の方を見られるようにするといった全ての取組が必要です。このように、先進国の取組と比較すると、残念ながら日本における認知症対策はかなり遅れをとっていて、その位置づけも高いとは言えません。各国の認知症国家戦略には、その全てに自宅や施設で住めるようにという脱病院の施策が盛り込まれており、それには経済的側面と人権的側面があります。病院に比べ施設、自宅で療養した場合のコストは明らかに低く、大きな開きがあり、それが脱病院の後押しにもなっています。また、経済的な側面以上に脱病院の根拠になっているのが人権的な側面です。どの国でも、過去に認知症についての偏見と本人の意思表示が難しくなるという問題から、人権が大きく損なわれていた時期があります。それを国家戦略の中で認知症高齢者の人権保護と、国によっては法制化しながら大きな目標に添えていることは、各国の国家戦略で共通していることです。認知症は、65 歳以上の高齢者の6人から7人に1人、85 歳以上の2人に1人と、誰もがなり得る病気です。私たち一人一人が、自分たちの問題として関心を持つ必要があります。冒頭のベルギーの記事と同日の新聞記事ですが、愛知県での2年前の出来事で、ベルギーとは対照的な事例です。スーパーに買物に来た御夫婦、妻は認知症です。混乱した妻がお金を払わずに店を出ようとして取り押さえられました。もう店には来ないでほしいと、店長の強い口調。夫は謝るしかありません。御夫婦は警察で調書をとられました。店側に認知症に対する理解があれば、もう少し違ったでしょう。認知症の判断力低下は、このようなトラブルを起こしやすいのです。今年4月から、国の対策であるオレンジプランの幾つかのモデル事業が始まっています。京都府のような自治体独自の取組も始まっています。認知症対策が少しでも早い時期に国家戦略的な位置づけになることを期待しつつも、各地域で行われる取組の一つ一つもまた注目していかなければなりません。同じ新聞の社会面で紹介されている日本での取組の事例に幾つか触れておきたいと思います。福井県敦賀温泉病院の取組ですが、認知症の人は外出時、「下を向いて歩く」「車道を歩く」「赤信号でも渡ってしまう」などの危険行動をとることが多いこと、普通はあちこちを見ながら歩くが、視点が1点に集中する傾向があることから、低い位置に道案内のサインをつける工夫をし、愛知県高浜市でその成果が生かされました。商店街で道にレンガを埋め込んで誘導サインをつくり、交差点が目立つように中心部に瓦を並べて菊の模様を描いたといいます。車椅子のための段差解消がベビーカーにとってもよいように、認知症の人が歩きやすければ、誰にとってもわかりやすいまちになるということです。ハードの整備だけでなく住民の理解というソフトづくりも重要です。認知症の人と家族の会愛知県支部や商工会議所は、認知症買い物セーフティーネット実行委員会を結成。静岡県富士宮市では、商店街やタクシー会社が認知症の顧客への対応を研修、市内の旅館では、認知症の人とその家族の浴衣は帯の模様を他の客と変え、館内で迷ったときなど、さりげなく声をかけ、手助けをする試みを行っています。さて、小樽市を見てみますと、平成 24 年 10 月1日の統計で人口 12 万 9,506 人、高齢化率 32.1 パーセント、65 歳以上の人口4万 2,599 人であり、認知症発症率を 15 パーセントとして計算すると、認知症高齢者数は 6,390 人となり、今後、発症すると考えられる予備軍は約 5,500 人と推計されます。このような超高齢化都市である小樽市の認知症対策として考えなくてはいけないことについて、順次質問してまいります。一つ目の質問は、自分たちの尊敬する父母や愛する妻や夫など、家族が急に認知症になってしまったときには、認知症の方をボランティアとして介護していた経験が役立ちます。そのためには、若者や他の職業に従事している幅広い年齢層の多くの方にボランティアで活動する場の提供が必要となります。同時に、ボランティア普及のため、ボランティア時間数に合わせ、黄色、青色、赤色バッジなどを渡し、家族の施設入所が必要なときに優先措置などを講じてはいかがでしょうか。このことも含め、ボランティアの拡大策について、市長はどのようにお考えでしょうか。二つ目は、高齢化率の高い小樽市では、いわゆる老老介護になる可能性が高く、現在 15 パーセントという認知症患者の入院割合を減少させるためにも、受入先の確保やサポート体制の確立とともに、今から認知症に関しての十分な理解と、それを受け入れる心の準備が必要になると思います。行政、民間、受入れ施設などが一体となり対策を図る必要があると思いますが、市長はどのようにお考えですか。三つ目は、先進国ベルギーの取組でありますが、認知症の方々の買物については、店側の理解があると自分で買物ができます。例えば、代金の支払や簡単な声がけ、また、店の前には認知症の方を歓迎するハンカチを掲げるなど、周りのちょっとした気遣いがあれば、認知症の方も買物をしたり、喫茶店を楽しんだり、習い事をしたりして、住みなれた地域で暮らすことが可能となります。今回、ベルギーの買物の例を挙げましたが、小樽市においても、認知症の方が住みなれた地域で暮らすため、ハード面は介護保険事業計画との兼ね合いがあり難しい面はあると思いますが、ソフト面での工夫は必要かと思います。まずは、簡単なもので構いませんので、ソフト面で何かできることはありませんか。今までに実施した例を含め、今後のお考えをお示しください。四つ目は、認知症対策の取組により、認知症の方が安心して楽しく過ごせる地域であることをアピールすることです。これにより、以前小樽に住んでいた方が戻ってくる、あるいは親族が本市に居住していて同居するなど、本市に縁のある方を呼び戻す効果が期待できるものと考えます。近隣に知り合いがいなくとも、地域住民などが優しくサポートする仕組みを構築することで、このような効果も期待できるものと考えますが、市長はどのようにお考えになりますか。五つ目は、認知症にかかわる業務などに従事する専門職などの知識を十二分に活用することが重要と考えます。専門職による講習会や勉強会などを開催していただき、町会役員、民生・児童委員、一般の医療従事者などが意識改革や対応力の強化を図ることにより困難な事例の対応も可能と考えますが、そのようなお考えがあるかどうかお聞かせください。六つ目は、認知症の方が徘回し、交通事故に遭ったり、真冬に凍死したりするなどの事故が報道され、つい最近では認知症の方の徘回で列車をとめたことの裁判記事を目にしました。徘回対策として、GPS機能付携帯電話や警察とのネットワークによる迅速な対応策を整備し、多くの方が利用することが必要と考えますが、市長のお考えをお示しください。七つ目は、認知症の方や、その家族の悩み相談が大切と考えます。おたる認知症ハウスをつくり、認知症の人や家族の人が自由に出入りできるようにします。そして、互いの状況や苦労を話し、支え合える場所となるようにします。それとともに、認知症に優しいまち・小樽の推進役としても進んでいけるようになると思いますが、市長のお考えをお聞かせください。最後に、国は認知症対策の充実に向けて関係 11 省庁が情報共有のための連絡会議を設置し、9月下旬に初会合を開き、認知症の方が安心して暮らせる社会づくりの推進を目指すこととしております。このようなことについては、私は国の動きを見てからではなく、むしろ地方が率先して縦割り行政を取り払って実施すべきと考えますが、いかがですか。なお、再質問はいたしません。明快な御答弁をお願いいたします。(拍手)
答弁 市長 中松義治(市長は2015年3月まで)
中村議員の御質問にお答えいたします。ただいま、認知症に優しいまちづくりについて御質問がありました。初めに、ボランティアの拡大策についてでありますが、施設を対象とする体験ボランティアについては、介護中の事故など課題が多いことから、レクリエーションなどの手伝いに限られていると聞いております。ボランティア活動をする場の提供は、難しい状況にあるものと認識しております。次に、ボランティアの時間数により施設入所を優先することについては、基本的に入所順位は各施設の入所判定会議で決められ、緊急性が高い方が優先されることになっておりますので、優先措置は難しいものと考えております。次に、認知症患者の入院割合の減少対策についてでありますが、国は本年3月に、認知症患者が在宅生活を継続できる支援策のあり方を検討する研究会を設置し、年内に報告をまとめることとなっておりますので、研究会の報告を踏まえ、必要に応じて平成 27 年度からの第6期事業計画で検討したいと考えております。次に、認知症対策に係るソフト面の実施等についてでありますが、本市では、認知症の方などを介護する方が介護中であることを周囲に理解していただくための介護マークを昨年取り入れたところであります。今後の認知症対策については、昨年9月に国が示したオレンジプランに基づき、第6期において必要な措置を講ずるとともに、地域の特性を生かしたソフト面の充実にも努めてまいります。次に、地域住民などがサポートする仕組みづくりについてでありますが、認知症の方が安心して暮らせる地域には、地域住民が互いに理解し助け合うことが必要であり、そのことが住みなれた地域で暮らしていくことにつながるものと考えております。このようなことから、今後、地域包括ケアシステムの構築を推進していく中で、市外からの居住を促す効果も期待できるものと考えております。次に、認知症にかかわる業務など従事する専門職等の知識を活用する講習会等についてでありますが、町会役員や民生・児童委員などには、まずは基本的なことを学ぶ認知症サポーター養成講座を受けていただき、さらに次のステップとして、専門職による研修会の必要性などについて、養成講座に登録されている講師などと協議してまいりたいと考えております。次に、徘回高齢者の迅速な対応についてでありますが、GPS機能付携帯電話については、認知症の方が携帯電話を持って徘回するとは限らないため、普及が進んでいないのが実態であります。また、警察等のネットワークについては、緊急時の連絡体制の整備を図るなど、関係機関・団体が一体となり、より密接な連携を進めてまいります。次に、認知症の方や家族が交流する場として、おたる認知症ハウスをつくることについてですが、市内に認知症の方や家族が常時集まる場所はありませんが、認知症の人を支える家族の方の団体がありますので、そうした中で家族が交流を図っていけるものと考えております。次に、認知症の方が安心して暮らせる社会づくりを地方が率先して実施すべきとのことでありますが、本市の認知症対策については、国の示すオレンジプランや今月開催される 11 省庁の連絡会議の動向を参考にしたいと考えております。