標茶町議会 令和4年第2回定例会 2022年6月7日
アイヌ政策推進交付金事業に係る地域計画の矛盾はないかについて
2022年6月7日、標茶町議会の一般質問で、類瀨光信議員が「アイヌ政策推進交付金事業に係る地域計画の矛盾はないかについて」質問し、町長 佐藤𠮷𠮷彦、教育長 島田哲男、社会教育課長 服部重典が答弁しました。
- 質問者
- 類瀨光信 議員
- 答弁者
- 町長 佐藤𠮷𠮷彦、教育長 島田哲男、社会教育課長 服部重典
議事録から機械で取り出したものです。正しくは会議録でお確かめください。
質問 2番 類瀨光信
次の質問にまいります。2点目の質問ですが、アイヌ政策推進交付金事業に関する地域計画に矛盾はないか。2019年4月、国会は「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」、以下、アイヌ新法と言わせていただきます。これを成立させた。「アイヌ文化の振興」「アイヌの伝統等に関する知識の普及・啓発」、そのための「環境整備策」を柱とするものであります。しかし、多くの自治体は、これらの施策に取り組むことで交付される「交付金」の獲得を目的として、「観光振興」や「箱物づくり」に邁進しているとのアイヌの方々からの批判もあります。本町ではどうか。新法成立時、町は、アイヌ協会を解散して相当の歳月が経過していて「アイヌ政策推進地域計画」が策定できないので、交付金事業の実施は不可能としていました。しかし、実際には地域計画を策定し、交付金事業に取り組んでいます。交付金事業実施に至る経過と事業内容、進捗状況についてお伺いします。さらに、地域計画の中に、本町のアイヌの実態と課題をどう反映させ、人々の誇りが尊重される社会をどう実現しようとしているのか伺います。
答弁 町長 佐藤𠮷𠮷彦
2番、類瀨議員のアイヌ政策推進交付金事業に係る地域計画の矛盾はないかのお尋ねにお答えいたします。1点目の多くの自治体は、これらの施策に取り組むことで交付される「交付金」の獲得を目的として、「観光振興」や「箱物づくり」に邁進しているとの批判がある。本町はどうかとのお尋ねですが、本町においては、アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する地域の普及・啓発として、「『標茶町文化財マップ』のデジタル化事業」の文化財マップのデジタル化、「アイヌ文化に関わる体験伝承事業」のアイヌ文化にかかわる体験、ペカンペ採取体験、アイヌ文化に関する学習支援などを実施または計画しており、これらの体験によりアイヌ文化への理解を深めるとともに、後継者を育成する目的で計画をしております。環境整備策としては、「標茶町博物館ニタイ・トにおけるアイヌ文化展示資料整備事業」の標茶町のアイヌ文化映像コンテンツの作成、標茶町のアイヌ文化重要地映像記録、ペカンペ採取用船製作、「アイヌ文化関連施設事業」として旧塘路駅逓所改修を予定しております。本町にかかわるアイヌ民俗資料、博物館の整備強化、文化を受け継ぐための担い手を確保する目的や、幅広い来訪者への本町のアイヌ文化と受け継がれてきた資料、そして伝承について理解を深めてもらうために計画をしているところでありますので、ご理解を賜りたいと存じます。2点目で触れられている本事業の実施に当たってのアイヌ団体に関する経緯についてですが、令和元年10月4日に釧路総合振興局において行われたアイヌ政策地域連絡会議にて、本事業の詳細についての説明を受けています。その中でアイヌ政策推進交付金事業計画の作成要領に、地域の概要欄としてアイヌ関係団体及び地域住民の協力体制という項目があり、本町では解散したアイヌ協会がその団体に当たると解釈していましたが、その後、事業化の声があり、本事業を担当する内閣府大臣官房アイヌ施策推進室との具体的な相談の中で、本町の活動しているアイヌ文化は、発信する文化団体やアイヌ文化の担い手が地域計画のアイヌ関係団体としてみなすことが可能との確認のもと、本事業の計画を令和3年7月2日に策定に至っている経過となっております。3点目の地域計画の中に本町のアイヌの実態と課題をどう反映させ、人々の誇りが尊重される社会をどう実現しようとしているのかとのお尋ねですが、本町においてはアイヌ語に由来する地名が数多く残されており、アイヌ文化や歴史にかかわる文化財も多数残されております。塘路、虹別地域は、明治期以降の北海道開拓が進む中でも、伝統的なアイヌ文化による祭事は継続し行われており、両コタンで使用されていた地域のアイヌ文化にかかわる伝統的な生活民具、祭具の一部は標茶町博物館ニタイ・トで保管しているほか、現在失われてしまった祭具も復元し、あわせて展示しております。また、標茶のアイヌ文化の特色として、19か所のチャシ、3か所の送り場も周知の埋蔵文化財包蔵地として登録しております。このようにアイヌ文化の歴史にかかわる文化財は多数残されており、その伝承と保存、これらの情報を蓄積し、展示や事業等を通して発信する拠点の整備が必要であります。また、かつてコタンのあった塘路地区には、アイヌ文化の楽器であるムックリの演奏を中心とした文化サークル「塘路口琴研究会あそう会」があり、本町のアイヌ文化の伝承活動をされてきた方などが在籍しており、博物館や塘路地区公民館とのアイヌ文化普及にかかわる連携事業も継続的に実施しており、町民のアイヌ文化に対する知識も高いものであります。しかしながら、こうした実態がある中で、文化を受け継ぐための担い手不足が顕著でありますが、本事業を通じ目的を達成し、町民や本町を訪れる方々に積極的な理解への促進を深めるとともに、アイヌ民族にルーツを持つ人々へは、みずからのルーツに誇りを持ち生きられる社会実現を目指してまいりたいと考えておりますので、ご理解をお願いいたします。
答弁 教育長 島田哲男(教育長は2022年9月まで)
引き続き、教育委員会に関するご質問にお答えいたします。2点目の交付金事業実施に至る経過と事業内容、進捗状況についてのお尋ねですが、本町では、令和元年10月に北海道主催のアイヌ政策地域連絡会議にてアイヌ政策推進交付金等についての説明を受け、地域計画策定に向けた検討が始まっておりますが、令和2年度より、アイヌ文化や歴史を後世に伝承する事業、アイヌ文化にかかわる資料や建物を適切に保存・管理するための施策について、博物館で実施可能な事業について検討を進めるとともに、「アイヌ施策推進地域計画」の素案の作成に着手し、現在に至ったところであります。本町のアイヌ施策推進地域計画の計画期間については、計画が認定された令和3年7月2日~令和8年3月31日の5年間となりますが、令和3年度の事業は、コロナ禍の影響により事業期間を十分に確保できない2つの事業を令和4年度実施に変更した以外は、計画どおり実施しております。具体的には、小学校で使用される「郷土読本」、標茶町文化財マップをPDFファイル形式にして幅広い活用を図る「標茶町文化財マップのデジタル化」を実施、「アイヌ文化に関わる体験伝承事業」では、「塘路口琴研究会あそう会」と連携して、ムックリづくりと演奏指導を含めた講座を標茶市街と虹別の2か所で開催。標茶のアイヌ文化を知る機会として、標茶市街と虹別の2か所で「標茶のアイヌ文化を知る講話」を開催。体験事業では、塘路湖でペカンペ(ヒシの実)を採取し実際に食べてもらう「塘路湖でペカンペをとって食べよう」を10月に開催。博物館で保存しているアイヌ伝統音楽をデジタル音源化し、今後の利活用を図る「標茶のアイヌ伝統音楽保存活用」の実施、本町のアイヌ文化や歴史について博物館で常設展示している解説パネルの多言語化の実施、博物館の貴重なアイヌ民俗資料の適切な管理のため防犯設備機器の設置、塘路地区において伝統的に行われてきたペカンペ採取の際に使用されていた船を復元するとともに、製作過程を記録・保存して、地域固有のアイヌ文化を伝承するアイヌ採取用丸木船の製作、旧塘路駅逓所内を本来の間取りへ復元する改修及び屋根と外壁を補修する「アイヌ文化関連施設整備事業」の実施設計を行っております。令和4年度につきましても、現時点では計画どおり実施する予定でおりますので、ご理解を賜りたいと存じます。
答弁 教育長 島田哲男(教育長は2022年9月まで)
大変失礼いたしました。先ほど答弁の中で一部間違った答弁をいたしましたので、改めて訂正をしたいと思います。答弁の中で、「地域固有のアイヌ文化を伝承するペカンペ採取用丸木船の製作」ということで申し上げるべきところを「地域固有のアイヌ文化を伝承するアイヌ採取用丸木船の製作」と申し上げてしまいましたので、この場を借りて訂正させていただきます。よろしくお願いします。
質問 2番 類瀨光信
町長、教育長それぞれから答弁をいただきました。その中で、市町村が策定する地域計画は、地域振興としてのアイヌを目玉とする観光事業になってしまっているのではないかという、そういったことをこの質問、答弁いただく前に考えていた、これは偽らざるところであります。ただ、今、両者のご答弁を聞いて、決してそういうことではなく、純粋に文化の継承、伝統の継承、そういったことと、それから人材育成に進んでいくのだということを聞いて、安心したところではあります。ただ、その計画を策定するに当たって、標茶のアイヌの実態というものをどういった形で取り入れたのかということが答弁の中になかったと思いますので、具体的にどういった方からお話を聞いて、そういった中からどういった部分を伝承していく、あるいは継承していくというふうになったのかということ、それをお伺いしたいと思います。
答弁 社会教育課長 服部重典(社会教育課長は2024年3月まで)
お答えいたします。アイヌ施策推進地域計画につきましては、アイヌ文化の保存または継承、アイヌ伝統等に関する理解促進などに資する事業などとされており、博物館で想定した計画となっておりますので、教育委員会よりお答えさせていただきます。議員ご承知のとおり、現在本町にはアイヌ協会はございませんが、先ほどちょっと町長の答弁の中でもありましたが、かつてコタンがあった塘路地区にはアイヌ文化の楽器であるムックリの演奏を中心とした文化サークルがあります。このサークルには、本町のアイヌ文化の伝承活動をされてきた方などが在籍されており、これまで博物館や塘路公民館とアイヌ文化の普及に係る連携事業を継続的に実施しており、このサークルの方たちのご意見や、丸木船製作技術を後世に残したいとの志を持つ方などのご意見、また、標茶町文化財専門委員会のご意見などをいただいて地域計画の策定をしているところでありますので、ご理解をいただきたいと思います。
質問 2番 類瀨光信
最初の答弁にもあったように、塘路地区と、それから虹別地区と、そういったところにアイヌ関連文化財、そういったものが残っているというふうに答弁されています。今のお話だと、塘路地域の口琴をやっているグループの方のお話を聞いたということですけれども、そもそもアイヌ協会があったときの、例えば会長さんを輩出しているのは虹別の地域です。先日お亡くなりになった「議長において発言記録を削除」初め、そういった方々が標茶のアイヌ協会を支えてきたというふうに理解していますが、そういった地域の話というのは、それは聞かなくてもよかったのでしょうか。
答弁 社会教育課長 服部重典(社会教育課長は2024年3月まで)
お答えいたします。本町には標茶を初め、塘路、虹別、磯分内など、アイヌ語に由来する地名が数多く残されており、標茶、塘路、虹別には一定規模のアイヌコタンがございました。本町の塘路、虹別地域は、明治以降もアイヌ文化の伝統的な祭事が行われており、塘路コタンのペカンペカムイノミや虹別の虹別コタンの熊送りにつきましては、昭和初期の記録としても学術調査報告書が残されている状況であります。今回策定した地域計画につきましては、アイヌ民俗資料の整備、博物館の整備強化、文化を受け継ぐ担い手の育成などの内容となっており、博物館の整備強化の部分が多くありますが、体験講座、ムックリづくりやアイヌ文化を知る講話などは、虹別地域でも開催されております。今後につきましては、虹別地域に残されているチャシの測量等の調査を行い、遺跡としての価値を確立するとともに、虹別地域の方々にご意見をいただきながら、周知のための案内看板を設置するなど、地域計画に反映させることも検討していきたいと考えておりますので、ご理解をいただきたいと思います。
質問 2番 類瀨光信
このアイヌ新法については、施行5年をめどに必要に応じて見直す等、定められています。そういったことを意識して、民間での交付金事業に関するアンケートというのが実施されています。その中で一番多かったのが、推進交付金事業に関して、「アイヌ民族の意思が尊重されていると思わない」という回答が最多の65.8%を占めました。「わからない」という回答が18.4%、「尊重されていると思う」という回答は15.8%でした。また、もっと意見交換をしてほしかった、そういった意見を述べる方も多くいたと、そんなふうに聞いています。標茶町の地域計画自体は、そういったことで、これからは文化の継承、文化財の伝承とか、そういったことに重きが置かれていて、その担い手に関して足りないかなというところ、悩みとしてあるようですけれども、そういったことを、後継者を取りまとめていく役割というのは、行政もその役割を担っているとは思うのですけれども、やはりアイヌの方々の組織、本町では解散してしまっていますけれども、アイヌ協会というものをもう一度つくっていくような、そういった流れというものも必要ではないのかなと思うわけです。釧路管内でいうと、アイヌ協会がないのは標茶町と浜中町だけです。そういった実態も踏まえて、「先住民族アイヌの尊厳を確立するため、人種・民族に基づくあらゆる障壁を克服し、その社会的地位の向上と文化の保存・伝承及び発展に寄与すること」を目的としている、北海道アイヌ協会のそういった考え方に基づいて団体を築いていくことが大切ではないでしょうか。2024年の法改正時にアイヌの人々の生の声を届けるためにも、それから文化、伝統の継承者を育成するためにも、アイヌ協会の設立を促していくべきではないでしょうか。
答弁 社会教育課長 服部重典(社会教育課長は2024年3月まで)
お答えいたします。議員ご指摘のとおり、アイヌの方々の尊厳を守っていく、取り戻していくという観点では、そういった組織をつくってというか、あって、そういった方々のご意見を伺うというのは非常によいことかなというか、必要なこととは考えます。ただ、現状的に標茶町におきましては、協会がないということで、今後そういった組織を立ち上げる場合につきましては、いろんな関係部署等との調整なりが必要になると思います。そういった部分では教育委員会もそういった方向性が出れば、どのような形になるかわからないですけれども、その部分で協力していきたいと考えておりますので、ご理解をいただきたいと思います。
質問 2番 類瀨光信
そのようにこれから取り組んでいっていただきたいと思います。そして、その際に現状において、日常生活における差別であったり、就労機会の不均等であったり、住居、それから子弟の進学率、そういった日常的なことを、やはりきちんと理解して、そういったところの日常に潜む問題点を、行政としても、それからご本人たちも理解して、解決に向けたアドバイスや支援、そういったものをアイヌの方々自身、それから行政が行っていく。それが行政に課せられた義務ではないかと思いますので、そういったことで醸成される、アイヌの尊厳が守られる社会というのを見ずに、せんだってアイヌ協会の重鎮がお亡くなりになっておりますので、そのことに心より哀悼の意を表して質問を終わります。(「休憩をとってもらえますか」の声あり)